
先日、私はこんな話をしていました。
「管理職のなり手が減っているのは、
個人のやる気だけの問題ではありません。
組織の構造も変えていかなければ、この状況はますます加速していくでしょう。」
そんな話をした数日後、内容について予備知識もなく観に行ったのが、
カンヌ国際映画祭で主演の2人が女優賞受賞し、
話題となった映画『急に具合が悪くなる』でした。
3時間を超える長編です。
哲学者と文化人類学者の往復書簡を原作にした作品だけあって、
派手な展開はありません。
二人の対話を中心に、ゆっくりと物語が進んでいきます。
生命、尊厳、資本主義、社会の分断、少子高齢化、介護……。
さまざまなテーマが散りばめられていて、
きっと観る人によって心に残る場面は違うのでしょう。
皆さんなら、この映画のどこに心が動くでしょうかね?
私の心に残ったのは、「問題を構造として見る」という視点でした。
(以下、ネタバレ注意!ついつい…すみません!)
舞台はフランスの介護施設。
施設長のマリーは、
「人間らしい介護を実現したい」という理想を抱いています。
しかし現実は、資金不足や離職による慢性的な人手不足。
理想だけでは現場は変えられません。
疲弊したスタッフ達は冷ややかでした。
映画には、さまざまな対立が描かれます。
・経営と現場
・介護施設と利用者・家族
・介護する人と介護される人
・看護師と介護士
・健常者と障害のある人、認知症の人
・搾取する側とされる側
私たちはつい、「どちらが悪いのか」「どちらが正しいのか」
という構図で物事を見てしまいます。
「あれが問題だ」「変わるべきはあなた」という話になりがちです。
でも、この映画は静かに問いかけます。
その構造の中だけで問題を見ていて、
本当に解決できるのだろうか。
そして、対立する両者の境界線を少しずつ溶かしながら、
両者をつないでいきます。
印象的だったのは、マリーがベテラン看護師に対して、
スタッフ全員の前で謝罪する場面です。
立場のある人が、自分の非を認め、
「リスクを取って、一緒に変わっていきたい」と伝える。
その一言が、少しずつ組織の空気を変えていきます。
そして施設では、「転ぶリスク」を選び、
積極的に素足で歩くことを取り入れていきます。
歩くことは、自由に生きること。
そして、社会とつながることだからです。
もちろん、現実の組織は映画のように美しく、
一直線には変わりません。
謝罪したからといって翌日から信頼関係が築けるわけでもありませんし、
構造が変わるほど現実は単純ではありません。
ただ、不可能を可能にしようとするマリーの姿勢が
とても勇気をくれます。
問題について「私たちは何を変えられるだろう」と問い直すこと。
管理職のなり手不足問題、
貴社には「構造の問題」が隠れていないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。